オノマトペの濁音対称性はどこまで一般化できるか——SFX・NINJAL・JMdictの比較

前回の記事では、マンガの効果音(SFX)語彙を調べ、4モーラの反復型オノマトペでは、反復単位の両方が同じように濁音化する例が大半を占めることを見た。では、この「濁音の対称性」は日本語の反復語全般に見られるのだろうか。それとも、音の印象そのものを伝えるオノマトペに偏った性質なのだろうか。

この疑問を切り分けるため、マンガSFX語彙、国立国語研究所のオノマトペ索引、一般語彙を含むJMdictの3資料を、同じような文字パターンで比較した。結論を先に言うと、今回の小規模な語彙調査は、濁音の揃いやすさが日本語の反復語一般の制約というより、オノマトペの音象徴と結びついた傾向である可能性を示した。

何を数えたか

対象は、前半2モーラと後半2モーラが対応する4モーラの形である。からから のように両方が同じものを「完全反復型」、ときどき や からがら のように対応する子音の清音・濁音が異なるものを「清濁交替型」として分類した。長音・促音・拗音・撥音を含む形は今回の単純な比較から外している。

3資料の比較

資料ABAB型候補完全反復型清濁交替型
マンガSFX語彙278語275語3語
国立国語研究所のオノマトペ索引47語47語0語
JMdictの日本語読み607読み54364

マンガSFX語彙では、4モーラの候補278語のうち、完全反復型が275語だった。例外として抽出されたのは かつがつ、ふかぶか、ほのぼの の3語である。国立国語研究所の教育用索引でも、ABAB型47語の中に清濁交替型は見つからなかった。独立した小規模資料でも同じ方向が出た点は、先の結果を再確認する材料になる。

一方、一般語彙を含むJMdictでは、同じパターンの候補607読みのうち、完全反復型は543、清濁交替型は64だった。かたがた、かねがね、さまざま、ときどき、ひとびと、ふしぶし など、反復形として明らかな一般語が含まれている。

なぜ違いが出るのか

オノマトペでは、反復される音のまとまり自体が、硬さ・粗さ・動き・音量などのイメージを担う。がらがら、ざらざら、どろどろ のような語では、濁音の印象が反復単位全体に広がっている。そのため、片方だけを清音にすると、音象徴のテンプレートが崩れやすい。

一般語彙の反復は、事情が異なる。ときどき や ひとびと では、反復は頻度や複数性を表す形態的な仕組みであり、濁音の位置は語の歴史や語彙化の結果として決まる。反復構造と音象徴が同じまとまりとして働くとは限らないので、清濁の非対称も許容される。

この結果から言えること、言えないこと

今回の結果は、オノマトペに「片側だけ濁音」を避ける絶対的な音韻規則があることを証明するものではない。SFX語彙はマンガ由来で、一般日本語の頻度分布を代表しない。国立国語研究所の索引も教育用の代表語彙であり、網羅的な辞書ではない。JMdictの単純な読みのパターンには、がしかし や どくとく のように、見た目が一致するだけで形態的な反復とは言えない語も混ざる。

それでも、語彙の種類を分けずに「反復語では濁音が対称になる」と一般化するのは危険だ、という実践的な示唆は得られる。音象徴を調べるときはオノマトペ、語彙化した反復語、形態的な反復を同じ箱に入れないほうがよい。

次の実験設計

今回の比較は、9月17日に行った疑似語実験の読み方にも関係する。実語で観察された「語頭の濁音シグナルが保存されやすい」という位置効果を検討するなら、少なくとも次の3つを分ける必要がある。

  • オノマトペにおける、反復単位全体の音象徴
  • 一般語彙における、反復・語彙化・歴史的な濁音化
  • 疑似語で位置だけを操作した、音韻的な実験

語彙調査は、規則を証明する最後の段階ではない。しかし、何を同じ条件で比べてよいかを決めるには役に立つ。今回の一番大きな収穫は、オノマトペで見えたきれいな対称性を、日本語全体の性質へ急いで拡張せずに済んだことだと思う。

参照資料

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